La mer bleue

紫野いき・13

土曜日の渋谷の109前は大混雑。人、人、人で若い男女で溢れかえっていた。

いつものようにジーパンにTシャツ、スニーカーの新藤はうんざりと言った表情でボーッと立っていた。

「し・ん・ど・う・く・ん」と喜久子が新藤の前に現れた時も泰明はしかめっ面を崩さなかった。

「ん?」

目の前にいる茶色の髪をアップにしたケバイ化粧のミニスカートにスパッツ、キャミをインにカシュクールのトップを着た女の子をマジマジと見つめた。手には大きなバッグを持っている。


「あんた、誰?」と泰明は不機嫌そうに言う。家出娘かよ?

「長門です」

「はぁぁぁぁーーーーー!!お前なぁ・・・・」

「ふふ、今日は変装してみたの。分らなかった?」

「本当に長門かよ?お前、変るなぁ。女は化け物って言うけどほんと、実感だわ・・・」
こいつ、本当に変ってるよなぁ。。。泰明は喜久子に会うたびに驚かされる。
それが、今までになく新鮮なのか、嫌悪なのか、自分でもまだ分らない。

「その言い方は良い方にとっていいのか、悪いほうにとっていいのか分らないわ・・」

「ま、両方かな・・」

「酷い!」

「なぁ、それより、どっかで飯食おうぜ。話も聞きたいしよ」

「ええ、そうね。どこに行く?」

「俺、車だからどっか行くか?」

「ええ、それでもいいし。私、渋谷のラブホテルでもいいわ」

「はぁぁぁぁぁぁーーーーーーー??お前なぁ、それ女がいう事かぁ?」

「そうね。でも、行ってみたいなぁって思ってたし。新藤君って行ったことあるんでしょ?私、かまわないわHしても・・・」

「へーーー、そうですか?お前、本気かよ?」
(自分が何言ってるか分ってるのかなぁ。変装して来て、ホテルに行こうって自分から言うかぁ普通?まぁ、こいつ普通じゃないけど。でも、案外、胸があるんだなぁ)

喜久子は喜久子で言ってしまったあとになって後悔していた。
(あーーー、私ったらどうして新藤君だと、大胆なこと言ったりやったりしてしまうのかしら?信じられない!もう、こうなったらホテル行ってバージン捧げちゃうしかないのかしら?)

「・・・・・・・・」

「・・・・・・あ、ごめんなさい。変なこと言って」と喜久子。

「新藤君にまかせる。。。」

「ん。。ああ。。。」任せられてホテルに連れ込めるかよっ!
ほんと、俺、こいつと居ると調子狂うんだよな。

結局2人は、当てもなく道玄坂を並んで歩き始めた。