La mer bleue

紫野いき・12

山田正志。。。。喜久子は先日、家まで送ってもらった公安の男の顔を思い出していた。

公安警察の刑事だと思っていたら、法務省からの出向で東大出のエリートだった。

やぼったい黒ぶちメガネ、整髪料で整えられた髪、安っぽいスーツの彼とは違った一面を垣間見て、ビックリした。

けれど、その彼が喜久子について何もかも知っているのがイヤだった。そして、そんな男とコンパの席で一緒になり、家まで送ってもらった事も気まずい。

まぁ、プライベートではもう、会うこともないのだから、気にすまい。そう思うことにして山田正志のことは忘れる事にした。

*****************************


午前中の講義を終え、いつものように1人で昼食を食べぼんやりと喜久子はベンチに座っていた。
泰明とキスをしてみんなの注目を浴びた場所に喜久子は1人ポツンと座っていた。

喜久子がボーッとしている間に何時の間にか新藤泰明が喜久子の座っているベンチの端っこに座って喜久子に話し掛けてきた。

「オッス」

「あ、新藤君、元気だった?」

「まあな」

「この間は家まで送ってくれてありがとう。あの、私、新藤君に振られたのかな?」

「礼、前も言ったぞ、おまえ・・・・・・」

「公安が張り付いてるような女はイヤだよね」

「まあな。んで、なんでお前に公安が付いてるんだよ?」

「そうね。知りたい?」

「俺が公安に目ぇ付けられたのは、お前とたまたま一緒の大学だったからなんだろ?」

「ええ、まあ、そうね。申し訳なかったわ」

「なんで、俺が目ぇ付けられたのかを知りてぇって言うのは当たり前だろが」

「じゃ、今度ゆっくり2人で会ってくださる?その時に話すわ」

「ん?まあ、いいけど・・・」

「じゃあ、後でメールするね。初メールだね」

「そだな」

喜久子が泰明にメールし、2人はデート?をする事になった。

***************************************

喜久子が泰明にメールをしたのは翌日。

"来週の金曜日の夕方か土曜日ならいつでもOKです。喜久子"
"じゃ、土曜日の昼。渋谷の109の前"

そっけないメールのやり取りの結果、2人は渋谷で会うことになった。
喜久子は新藤と会う事が公安の山田にばれないか不安だったが、いつもいつも喜久子の行動を監視している訳ではないし、人が多いところで会う分には分りにくいだろうと思い、渋谷で会う事をOKした。

何を着て行こう。いつものお嬢様ルックだと、公安に見つかった時に言い訳ができないから、ちょっと変装しよう。
ウイッグや今時の女の子が着るようなミニスカートにレギンス、ピタピタのTシャツにチュニックなどを密かに買い揃えてみた。

着てみると中々似合っている。私、案外、こういうのも似合うのね!
喜久子は自分が少しだけ変ろうとしているのを感じた。

12時に109の前に行くまでに、喜久子はパルコか西武百貨店の化粧室で着替えることにした。
化粧もいつもよりは濃い目にしたほうがいいわね。
それには、どの位時間がかかるのか、1度練習してみよう。
そうね、部屋でするのもいいけど火曜日に実際にパルコに行って練習してみよう。。。

ちょっとドキドキ。女スパイになった気分かも・・・。
泰明も驚くかな?喜久子は今までになくワクワクした気持になった。