私のテディベア― 8

週末、レイコはスタンとサードアベニューのカフェで待ち合わせていた。
スタンは今日も上から下までゴルチェで決めている。
あー、もったいない、彼がゲイだなんて。惚れ惚れするほど美形のスタンを見てレイコはつぶやいた。
「スタン、オッシャレー!素敵よ!洋服もあなたも!」とレイコが言うとスタンは口を少し皮肉っぽくゆがめて笑った。

「サンキュ。そう言ってくれるのはレイコだけ。研究所じゃ、誰も洋服やおしゃれなんて興味ないんだもん。ハァ」とため息をついた。

「ねぇ、この間の熊男の話なんだけど。スタン、あの人と本当に仲良しなの?」

「ああ、ウォレンはいい奴だよ。ちょっと変わってるけど…」

「あの人、対人恐怖症なの?あんまりしゃべらないし」とレイコが言うとスタンはウンウンと頷いた。

「ウォレンはさぁ、天才だったから飛び級で14歳で大学に入って、20歳で研究所だろ、大学の時、アメフトしてたけど、いろいろあってさぁ。あんまり人付き合いしないんだよね」
「ねね、ウォレンって別に恋人が本当に欲しいわけでも、結婚したいわけでもなくて、親からヤイヤイ言われるから、誰か恋人の振りをして欲しいって言ってるんでしょ?ゲイの振りして『僕はゲイです』って親に宣言するってダメ?」

「レイコ!ウォレンは別にゲイじゃない。カミングアウトして、やっぱり違いましたなんて、言えると思う?それ、僕たちゲイにとっても失礼だよ。ウォレンは本当は女の子と付き合いたいけど、どうもピッタリ合う人がいないみたいだけなんだよ。それに、僕が思うにレイコに気がある」

「ふぅーん。私に気がある?日本人は好きみたいなこと言ってたけど、別に電話もかかってこないし、メールも来ないわよ。頭もいいし、金持ちだから絶対にイヤって訳じゃないけど、何かピンとこないわ、彼」とレイコはスタンに言った。

「ウォレンってめったに女の子と食事もしないし、家まで送ったりしないんだよ。僕が日本人の同級生がいるって言ったら、ウォレンの方から珍しく会って見たいって言ったんだよね!たぶん、付き合ってくれって言えなくて、恋人の振りとか言ったんじゃないかなぁ」とスタンが言った。

「なんか、あんな大きな図体のくせに、姑息な感じね。そういう男の人嫌いだわ!それに、お金で釣ろうとしてるのも気に入らないっ!」

「んー、ウォレンって今まで、女の子と本当の意味で付き合ったこと無いから、怖がってるんだと思うんだよね。ウォレンを僕とレイコで変身させて、自信を持たせてあげればいいんじゃないのかなぁ。彼、今まで研究室に篭ってて、食事とか映画とかコンサートとかパーティとかほとんで行った事がないんだよ」とスタンが言った。

「見た目を良くすれば、お金持ちだし、背は高いし逞しいから、嫌ってほど女が寄ってきて、モテモテ熊になるわけね」とレイコはククッと笑いながら言った。

「二人でウォレンを変身させてイイ男にしてやろうよ!」とスタンがニッコリ笑った。