私のテディベア― 2


オーク材を使ったインテリアがちょっとクラシックな感じのイタリアンレストランは
週末でガヤガヤとにぎわっている。

美味しそうなガーリックやハーブの香り。
人の話し声や食器のカチャカチャという音でごったがえしていた。

スタンを探して、テーブルに行くと、そこに大きな濃いブラウンヘアの男とスタンが座っていた。

スタンはプラチナブロンドで薄いブルーの目。
整った繊細な顔立ちと優雅な身のこなし。
ああ、彼がゲイじゃなかったらよかったのにとレイコはため息をついた。
180センチの身体は細身だけれど、ジムで鍛え、いつもお洒落だ。
今日もコム・デ・ギャルソンのスーツで決めている。
麗子がスタンと仲良くなったのもスタンが『コム・デ・ギャルソンのデザイナーって日本人だよねぇ』
と話しかけてきたことから始まった。
隣の大きな男はGパンに白いポロシャツにジャケットとかなりオタクぽい。

がっしりとした顎や鼻梁はギリシャ神話の彫刻のようだ。
頬は夕方だからか、伸び始めたひげに覆われている。
ボサボサの髪にかくれている彼の顔がハンサムだと気が付く人は少ないようだわと麗子は思った。


「こんばんは、スタン。こちらは?」と聞くとスタンがその大きな男を紹介してくれた。
「レイコ、彼はウォレン。同じ研究所に勤めてるんだ。ウォレン、こちらは、僕のオリエンタル・プリンセスのレイコ。大学院の時の友達」と紹介してくれた。

「こんばんは、ウォレン。はじめまして」とレイコはにこやかに言った。
縦も横も大きな人、まるでお相撲さんみたいねとレイコは思った。
「レイコ、こんばんは」とその大きな男は大きな身体に似合わないちいさな声で答えた。
ウォレンと紹介された男はガッチリとした身体で、骨格が大きく筋骨隆々と言う言葉がぴったりだった。

レイコはウエイトレスにパスタとグリーンサラダを頼み、スタンにすすめられてワインを一口飲んだ。

「彼、ずーっとフットボールをやってて、凄く逞しいんだよねぇ」とスタンが憧れたように言った。
「そうなんだ。ふぅーん。ウォレンって無口なの?」とレイコが言うと
「いや、そんなことないけど……」とウォレンは口ごもった。

レイコはウォレンをジロジロと見て、観察していた。
ふぅーん、背は高いみたいねぇ。190センチはありそう。で、スタンと同じ研究所勤務ってことは、頭はいいのね。
でも、この服装はいただけないわねぇ。オタクだわ。あら、素敵なグリーンの瞳。この人、よく見るとハンサムね。

「ねえ、レイコ。ウォレンは素敵でしょ?」とスタンが聞いてきた。

「スタン、誰にでも僕のレイコとか言わないで!真に受ける人もいるからっ!リズは私とあなたが恋人同士だと勘違いしてるのよ。ウォレンの評価は、Aマイナス。なぜって、週末のディナーをスタンとだなんて、悲しすぎるわ。ガールフレンドいないの?それともゲイなの?」

「ウォレン、あんなこと言ってるよ。レイコだって、一人で夜遅くまで仕事してたくせに」とスタンはウォレンに言った。
「レイコはなぜボーイフレンドいないの?」とウォレンの深い緑色の瞳がレイコをまっすぐに見つめていた。