Close To You・1

私の飼い主のり子さんは独身の女である。
俗に言う負け犬ちゃんで三十代後半。
フリーのライターをしているのだが最近ご機嫌斜めである。
なぜなら知り合いの先輩ライターが作家デビューをしたからだ。
確かにその先輩ライターは昔から『私、絶対に作家になるっ!』
と言っていたのだがのり子さんは(フフン!成れるものなら成ってみろ!)とせせら笑っていたのだ。
でも、ある大手出版社の新人賞に応募し、見事新人賞を射とめ、あれよあれよという間に新進作家になっちゃったのよ。(笑)
負け犬は仕事でも負け犬になっちゃって非常にご機嫌斜めなのである。困った、困った。

「マーちゃん、どーしてあの人が作家になれて、私はなれないのっ!
おかしいーーー!絶対におかしいっ!」とブツブツ私に言ってなかなかネコ缶を開けてくれないんだよネェ。早く食わせろー!
そんなに作家になりたいのなら、仕事とは別に小説を書いて応募するなり投稿すればいいのにねぇ。
私がお出かけ前に毛づくろいをしていると
「マーちゃんはいいわねぇ、お気楽で!悩みなんかなーーんもないでしょ!お姉さんはね、仕事で大変なのよぉぉぉーーー!」と言いながら乱暴に抱いたり、尻尾をニギニギしたり時にはギュッと強く抱かれたり。。。
飼い猫は辛いよ。。。
私?私はこの飼い主の飼い猫、マーちゃん。
一応、雌猫なんだけど、飼い主に避妊手術されちゃって元雌猫というところだろうか。。。。
子猫の産めない身体です。。。飼い猫だから仕方ないニァー。

フリーのライターなので日中は打ち合わせだ、取材だと飛び回り、家に帰って原稿を書くというのが飼い主様の生活パターン。
ちょうど、私の活動時間になるとのり子さんも家の中でゴソゴソと活動し始める。
だいたいは夜に人が寝静まってからパソコンでカタカタと原稿を書いている。
そうして、私のエサ代を稼いでくれているのだ。
頑張って働いてね!美味しい猫缶沢山たべさせてねっ♪
たまにはお刺身もね。
現在独身ののり子さん、ボーイフレンドやセックスフレンドには不自由していないようで、いろいろな男をこの家に引っ張り込んでくる。

あまりに男っ気なしでは女として潤いがないんじゃないの?と思うけれども誰とでもと言うのではイカンよね。
飼い主さまは美人ではないけれどメスとしての魅力は十分に持っているニャアと私が見ても思います。フフ

ここの所、仕事の依頼が途切れてヒマらしく、ご機嫌斜めにますます拍車がかかっている。
今夜もきっと誰かを連れてくるのだろうニャア。
そろそろ、夜中の12時。お帰りの時間じゃないのかなぁ。。。
「マーちゃん、ただいまぁ、ハイ、お出かけしていいよぉぉーーー。ケイ、上がって頂戴。久しぶりなんだから。。。早くぅぅぅ」
ご主人さまは少し酔っ払っているようだ。
今夜のお相手はかなーーり年下のデザイナーの男の子。
仕事関係の男には手を出さないというのがご主人のり子さんのルールだったのにケイに関してはこのルールを直ぐに破って、そうそうに頂いちゃったようである。
ケイはパッと見はひ弱そうな色白の芸術家タイプの男だが、脱ぐと引き締まった身体と何か女心をそそる強いフェロモンを発する瞳で女を狂わせるらしい。
ケイ本人はあまり自分の魅力に気が付いていなくてこの業界の女達の熱い視線に戸惑っているようだ。
「ケイはね、あんなにキレイで可愛いいくせに結構できるんだよなぁ。だいたい、顔が良くてカッコつけてる奴ってデザイナーとしてはヘタッピな奴が多いのに。あいつ、なかなかやるのよ」
なかなか人をほめないのり子さんがほめるんだから、ケイってたいした男の子のようですニャア。

「のり子さん、大丈夫?」とのり子さんを心配してくれるケイ。
フフフ、のり子さんは大丈夫ですよ。ケイ君の方があぶないよぉ。
のり子さんはケイにもたれてうっとりとしている。
「うん、ケイ、ありがとう。コーヒー飲んでいく?今夜は泊っていけば?」
「そうだなぁ。とりあえずコーヒー飲ませてもらおっかな」
ソファに座って、パラパラと雑誌をめくるケイはもう何度もこの部屋に来て、飼い主を抱いている。
ケイはただコーヒーを飲んだり、話だけして帰るということはない。
ケイがこの部屋に来るということは必ず飼い主とセックスをするという意志がある時だ。
「のり子さん、ボクはアイスコーヒーがいいなぁ」
「うん」アイスコーヒーを作って持ってきたのり子さんはケイをジッと見つめている。
ゴクリとケイの喉仏が上下しアイスコーヒーを飲む。
「のり子さん、どうしたの?今夜の、のり子さんはちょっとおかしいな」
と言いながら手馴れた動作でのり子さんの顔を引き寄せてキスをした。
唇の端をゆっくりと舌でなぞり、唇を合わせると舌を絡め合わせた。
のり子さんは目を閉じてケイに抱かれながらケイの洋服を脱がし始めた。
「一緒にシャワーしよ、ケイ」「うん」
二人はそのままバスルームに。
私もバスルームまでついていって二人が洋服を脱ぎながらじゃれあうのを見学。
いつも思うのだが、とても楽しそう。
ケイはのり子さんの乳首を舌でころがし、吸いついている。
のり子さんの乳房はちょっと垂れているけどGカップ、掌でギュッとつかんでも少し余るほど
「ん・・・・、ケイ・・・」とのり子さんはケイの背中をギュツと抱きしめている。
バスルームでメイクラブ。2人のエッチな声がバスルームで響いていた。

「のり子さん、どーしたの?」
「なんでもないっ!いいのっ!私は仕事に生きるっ!」
「それ、前も言ってたけどね」ケイは何だか苦笑してる。
「ケイっ!お前、また若い女にちょっかい出してるだろっ!聞いたぞ!」
「そんなぁ、若い子が勝手に寄ってくるだけだよぉ」
「うそつけ!おねーーーさんは何でもお見通しだいっ!」
うーん、今夜の、のり子さん、相当に荒れている模様。
どうしちゃったのかなぁ?
いつもは割りといい女気取って、絡んだりしない人なのになぁ。。
「のり子さん、ね、キスしていい?」
「ん?ケイ?いいよ」
「のり子さん、いいの・・」またまた、いつものラブモードに戻って二人はイチャイチャ。

翌朝、8時きっかりにのり子さんは目を覚まし、コーヒーを入れ、イキリスパンのトーストを焼き、グレープフルーツとオレンジを半分ずつ混ぜたのり子さんお気に入りのフレッシュジュースがテーブルに並んでいた。
のり子さんは家庭的というか掃除や洗濯、料理が好きな女の人で主婦としても充分にやっていけると思うニャ。
そういう関係になって、イロイロと尽くしてもらうと男達はけっこうのり子さんに執着して独占契約、つまり結婚をしようと迫るみたいだ。
しかし、今までのりこさんがOKしたことはニャイ。

「ケイ、起きて!」
「ん・ん?あ、おはよ、のり子さん・・」
「朝ごはん出来てるから、サッサと食べなさい。〆切りの仕事があるんでしょ?」
のり子さん、私にもご飯ちょーだいっ!ってニャオニャオ言ってみたら「はーい、マーちゃんもご飯あげるからねー!」って私のお気に入りのカニカマ入りの缶詰を開けてくれた。
嬉しいニャッ!

ボーッとしてるケイはそれでもキレイで、何だかフェロモンが漂っていた。
猫ってフェロモンに敏感ニャンだよね♪

ケイは寝ぼけていたけれど、渋々起きて顔を洗い、朝ごはんを食べて帰っていった。
何だか、のり子さんはケイのおかあさんみたいだった。

それから数日はのり子さんも急に仕事が入って来て、バタバタ出かけたり、パソコンの前で資料を見ながら原稿をまとめたり、ずーっと忙しく働いていた。